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青海(おうみ)と申すものの煩悩の叫びブログ。 現在上橋菜穂子さんの守り人シリーズにどっぷりハマリ、原作がとにかく大好き。アニメ、コミックスも好きです。ごくまれに駄文を書くかもです。古い記事にはアニメGH(小野不由美:悪霊シリーズ)のツッコミもあり。
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Thu 19 , 23:53:59
2007/07
ええと、ですね。
二次創作と呼ばれるもの、書いてしまいました。
ごっつ久々です。
つか守り人初書きです。

本当は全然別のお笑いネタを書こうと思っていたのですが。
ノートにボールペンを降ろしたら、全然別の話が飛び出してきました。
イメージの元を辿ってみたら、ふなななえさんの■ふな屋・囲炉裏端■の中にあるイラストからイメージが来ていることに気付きまして。
ななさんに捧げさせていただきます(ぺこり)

と、いうわけで。
レベル低い駄文ですが、読んでもいいよと仰ってくださるお心の寛い方のみ「続きを読む?」からどうぞ。

「ねえバルサ、バルサってば!!!
行こうよ、お祭り。俺の村の祭りにおいでよ」
きらきらと目を輝かせて自分を見上げるタンダを見ると、つい願いをかなえてやりたくなってしまう。
子犬みたいな奴だな、と思いながら、その期待に応えてやれないことを思うとなんだか申し訳ない気持ちになった。
「悪いな、祭りにはいけない」
なるべく無愛想にならないよう気を使ったつもりだったが、やはりというか予想通り、たちまち少年の顔は半泣きになった。
「なんで?どうして?」
「私たちは追っ手持ちなんだ。うかつに人前に出るわけにはいかないんだよ。
ましてや祭りなんて、どこで誰が見ているかわからない場所にはね。
だから 行けない」

諭してやりながら、何故この子はこんな日陰者の自分にこんなにも懐いたのかと内心首を傾げた。
魂が見えたり、人の顔に死の影を見てしまったりと、少々他と違うところはあるらしいが、こうして見ているといたってまともな明るい子だ。
おっとりして素直な、陽だまりのような子だ。
泣きそうになりながら、でも泣くまいとしてまっすぐ自分を見つめてくる。
しばらく見つめていたが、やがてぼそっと呟いた。
「どうしても、だめ?」
その縋るような眼差しに、バルサは溜め息を吐いてしゃがみこんだ。
タンダと目線を合わせてやる。
「ごめんな、それはできない。
追っ手に気付かれたら、私らはここを離れなきゃいけないし、その時にあんたたちに災いがかかるかもしれない。
それは避けたいんだよ、わかってほしい」
「・・・・・そしたら。
そうしたら、追っ手に見つからなかったら、ずっとここにいてくれる?
ずっと一緒にいてくれる?」

バルサは今まで、年齢のわりに多すぎる苦労をしてきた。
やろうと思えば嘘をつくことや、適当にいい逃れることだってできる。
しかし、この瞳の前では嘘をつく気にはなれなかった。
「ずっとも無理だ。
いずれまた、金を稼ぎに私とジグロは旅に出るだろうし、一度旅に出ればどこまで行くかはわからない。
でもあんたが望んでくれるなら、ここを私たちの帰ってくる場所にするよ。
あんたが待っていてくれる限りね。
それじゃ、だめかい?」
タンダはしばらく口を引き結んでじっと宙を睨んでいたが、やがて猛烈に首を振って呟いた。
「だめじゃ ない」
泣き出すか、と思っていたバルサはほっとして言葉を続けた。
「祭りに一緒に行けなくてごめんな。
お母さんや兄さん達と楽しんでおいで」
そう声をかけると、タンダはぱっと顔をあげ、一瞬睨むようにバルサを見た。
が、すぐに こくんとうなずくと、身を翻して村の方に駆けていった。

 

その日から、かれこれ3日ほどタンダを見ない。
殆ど毎日やってきては まとわりついていたのに。
立ち去る直前の、睨むように自分を見たタンダの瞳が どうにも気になっていたのだが、自分から村に近づくわけにもいかない。
祭りの準備があったりして忙しいのだろうな、そんな風に思いながら日が過ぎていった。


夏至の日。
一年で一番長い昼の日、村は朝から独特の賑わいに包まれる。
村はずれから、さらに隠れたところにあるトロガイの小屋にも、なんとなく祭りの気配が伝わってきた。
夕方が近くなると、風に乗ってかすかに笛や太鼓の音が流れてくる。
カンバルの夏至の祝いとは、また違った感じだな。
そんなことを思いながら、バルサは水を汲みに外に出た。
トロガイの小屋から、少し村のほうへ寄ったところに清水が湧いている。
それを汲んで、水瓶に溜めておくのもバルサの仕事だった。

風に乗ってきた調べをなんとなく聴きながら、ついタンダの顔を思い浮かべる。
祭り、楽しんでいるかな。
きっと自分のことなど忘れて楽しんでいるだろう。
それで いい。
自分はいずれ親の敵を討つのだ。
陽だまりのようなタンダには、縁のない世界だから。
そんなことを考えながら水を汲んでいたとき、山道に気配を感じた。
村のほうから来る。
ジグロもトロガイ師も小屋にいたから、こちらから来るはずはない。
まさか・・・と思ったとき、藪が揺れて、そのまさかが顔を出した。
「あ、やっぱりここにいた」
髪の毛に木の葉をくっつけて にやっと笑ったのは、たったいままで気にかけていた少年だった。

「タンダ、どうしたんだい?今日は祭りなんだろう?」
「そうだよ、だから来たんだ」
3日前に別れた時の睨むような眼差しはどこへやら。
タンダはいつもの通りの明るい笑顔を浮かべてすたすたとバルサのすぐ前まで来た。
懐に手を入れて、なにやら取り出している。
「バルサ、手をだして」
言われるままに手を出すと、懐から出した紙の包みを乗せられた。
タンダを見やると、いかにも嬉しそうに
「開けてみて」
と言う。
包みを開くと、出てきたのは飴細工だった。
小さいながら花やうさぎの形をしていて可愛らしい。
「タンダ、これ」
「バルサと食べようと思って持ってきた。
ね、バルサ、トロガイ師の小屋で、俺と一緒に夏至祭りしよう。松明焚いて、歌うたってさ。
トロガイ師とジグロには、もう言ってあるんだ。
バルサ驚かそうって。
今頃松明の準備してくれてるはずだよ、俺もバルサに見つからないように、こっそり薪集めていたんだ」
どうだ、と胸を張って見上げてくるタンダを見て、バルサは腹のそこからじわじわと暖かい気持ちががこみ上げてくるのを感じた。
「こいつは一本とられたな」
そんなことをいいながら、自分がきちんと笑えているだろうかということが、やけに気になった。
どうも自分は仏頂面がしみついてて いけない。
その心配は杞憂だったようで、タンダは至極満足そうな笑顔を浮かべると、バルサの手からさっさと水桶をひったくった。
「さ、水汲んで、早く帰ろう」
「ちょっと待って。お母さんや兄さん達はいいのかい?」
するとタンダは3日前を思わせるような真剣な眼差しで バルサを正面から見つめ、ゆっくりと言った。
「いいんだよ、俺はバルサといたいんだから」
一瞬バルサは気を呑まれて何も言えなくなった。
が、タンダはすぐにいつもの笑顔に戻るとさっさと水汲みの続きを始めた。

「そういえば、バルサ、この間縫われた傷は平気?」
言われて思い出した。
数日前、稽古のときにジグロの短槍を避けそこない、右肩に浅傷を負ったのだ。
深くはないが、長く切れたので 縫ったほうが早く治るからとトロガイ師に縫ってもらったのだ。
「師匠、俺にはちゃんと消毒しとけって言うわりに、結構自分はめんどくさがりだからな。
バルサ、もう糸抜いた?傷口ちゃんと洗ってる?」
痛いところをつかれて バルサはひるんだ。
「糸はまだ抜いてない。傷口は・・・・これからする」
「忘れてたんでしょ」
「・・・・はい」
「じゃ、帰ったらまず、傷の手当てするから。
他にも新しく傷作ってない?またほっときゃ治るとか言って手当てサボってないだろうね?」
たたみかけるように言われて、バルサは少々むっとした。
今日はタンダに押されっぱなしだ。ちょっと悔しくなって反撃を試みた。
「平気だってば。ほら半分持ってやる、よろめいてるじゃないか」
「怪我してるからダメ!」
「元々浅いし、最初から一人で水汲みに来る気でいたんだから大丈夫。
ほら、片方持ってやるから」
「・・・・・右はダメだよ」
「はいはい」
とりあえず妥協して、左手で手桶を持つ。
少女とはいえ、常に鍛えているバルサにとってはたいした重さではない。
軽々と運びながら、自分の肩の辺りまでしかないタンダを見やった。
悔しそうな顔をしながら隣を歩いていく。
こういうのだって、悪くないな。
そんな風に思って、タンダに歩調をあわせながら歩いていく。
やがてタンダが歌い出した。夏至祭りの歌だ。一年で一番長い日が暮れようとしていた。

 

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